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日本シリーズ裏で敗者がキャンプ 「大事なのは春より秋」と権藤博氏(日刊ゲンダイDIGITAL)




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出典元: 秋季キャンプに合流した中日の与田新監督(C)共同通信社

コラム【権藤博の「奔放主義」】

 日本シリーズの裏で、敗者たちの戦いが始まっている。新監督を迎えた巨人と阪神も秋季キャンプをスタート。どちらも、多くの試合を組んで実戦中心の内容になるそうだが、秋のキャンプはまさに「戦い」だ。長い指導者人生、私は「この時季の練習が、最も大事だ」と、徹底的に選手を鍛えた。

 思い出すのが、横浜の監督に就任した直後の1997年の秋。選手には事前に「ガンガンやる。覚悟しておけ。ただし、3勤1休でしっかり休みもやる。ゴルフバッグを忘れるな」と伝えてあった。「えっ、ゴルフはOKなんですか?」と驚く選手もいたが、いざ練習を始めると、すぐにゴルフなんてとんでもない、という雰囲気になった。

 投手陣にはイヤというほど走り込ませた。投げ過ぎて潰れたヤツはいても、走り過ぎて潰れたヤツはいない、が持論。中でも、選手が悲鳴を上げたのが、50メートルのインターバル走だった。全力で走らせた1本目のタイムをその選手のベストタイムとし、プラス0・3秒までが合格。30本クリアするまで、延々とダッシュを繰り返すのだ。0・1秒でも遅れたら不合格。20本目あたりから、誰も口をきかなくなった。

 これを、休日以外は毎日だ。最初の休みにはゴルフへ出掛けていった選手たちも、キャンプが進むにつれて休みの日でもホテルの自室から出なくなった。「ゴルフは別だろ。情けない」と選手を冷やかしながら、私はニンマリしたものだ。

 メディアは「地獄のキャンプ」というフレーズを好む。<初日から8時間の猛練習 地獄の秋が始まる>なんて見出しをよく目にするが、ダラダラと長くやっても意味はない。量は指導者の自己満足。いかに、本当の意味で選手を追い込むか。質を求めて工夫を凝らすのが指導者の仕事だ。

 プロ野球界の正月に例えられ、多くの注目が集まる春のキャンプは、実はやれることが少ない。春の1カ月で長いペナントレースを戦い抜く体力と技術をつけるというのはタテマエ。シーズン開幕を控えて、選手に無理はさせられない。故障させたらペナントレースそのものに響く。横一線でポジション争いというのも同じで、実際には2月の時点で、監督の頭の中では大体、レギュラーは決まっているから、これもタテマエである。

 その点、秋は、指導者も選手もケガを恐れずに追い込むことが可能。致命的な故障は別として、開幕まで時間があるから、無理もさせられる。それで、自分の肉体の限界も知ることができ、春の故障防止にもつながるのだ。

 負けたチームに、休んでいるヒマはない。
(権藤博/野球評論家)


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