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黄色靱帯骨化症と戦うロッテ・南、どんな復活劇を描くのだろう(スポーツ報知)

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出典元: 復活を目指しロッテ浦和でブルペンに入る南(カメラ・長井 毅)

「傷口ですか? そのノートよりも大きいですよ」。ロッテ・南昌輝投手(29)は淡々とした口調でそう答えた。7月末。中継ぎとしてフル回転していた右腕は思いもよらない病魔に襲われた。国指定の難病である「黄色靱帯骨化症」だった。

 8月17日に受けた手術は3時間半に及んだが、無事に成功した。脊髄の後ろにある「椎弓(ついきゅう)」と呼ばれる部分を上下につなぐ黄色靱帯が骨化。「メインが1か所で、(骨化しそうな)予備軍的なところが数箇所あった」。背中に残る手術痕は20センチほど。記者が手にしていた15センチ×10センチぐらいのサイズのノートを見て、冒頭のコメントが出てきた。

 医師から診断結果を聞いた時は「ビックリはしましたけど、普通じゃないとは思っていたから」と不思議と驚きは少なかった。それよりも命の危険性がなかったことに安堵(あんど)した。「足のしびれがあったから脳梗塞だと怖いなと。でも、死に関わる病気じゃなくてよかった」と、当時の心境を振り返った。

 違和感があったのは球宴前。「はじめは足の裏が靴下を2枚くらい履いているような鈍い感覚だった。走れるし、いけるかなと思っていたけど、投げていくうちにどんどん脱力感が出てきた。その影響で足の筋肉が壊れていて足が前に出なくなっていった」という。

 今季は昨季の成績を上回る35試合に登板し2勝2敗、6ホールド、防御率3・00をマークしたが、南にとっての“今季最終戦”は7月20日のオリックス戦(ZOZO)となった。5回途中からマウンドに上がった右腕の体は限界に達していた。「ブルペンから足の感覚がなかった。でもボールは投げられたから何とかなるかなと思っていたけど、足が曲がらなくなって走れなくなった。それが両足にきたんです」。足が前に出ない初めての感覚に襲われた。ホームベースのカバーに行く足取りもおぼつかず、自分の足だと思えなかった。翌21日に出場選手登録を抹消された。想像していたよりも早く今シーズンに幕を下ろすことになり、「投げ終わった後はマリンにはもう戻って来られないんじゃないかと思ってベンチからマウンドを見ていた」と、不安にかられた。

 落ち込む姿を見ていた大隣(現2軍投手コーチ)が声を掛けてくれた。大隣自身もソフトバンク時代の13年に「黄色靱帯骨化症」を発症していた経験から、リハビリの仕方や医師の紹介についてなど助言を送ってくれた。そのおかげもあって少しずつ気持ちは前向きになっていった。「一番低い目標でいうと、もう一回、1軍に戻りたい。病気になった選手の中では1番成績を残したい。大隣さんが身近な例でもある」と発症後に白星を挙げ復活した“先輩超え”を目標に掲げた。

 術後2週間からキャッチボールを再開し、今ではブルペンで投げ込めるまでに回復した。「できるだけ自分は病人だと思わないようにしているし、そう思われないような練習をして、2月からは他の選手と同じように競争ができればいいなと思う」と意気込む。

 他球団では大きなけがや手術をした選手に対して育成契約を打診するケースも多く見られるが、ロッテは南と来季も支配下契約を結ぶ方針だ。「ありがたいです。だからこそ来年に懸けたいという思いがすごくある。来年ダメならダメでもいいかなと思うくらい春のキャンプに向けて準備したい。この期間は準備の期間だと思ってやっていく」と球団への感謝の思いと、引退も懸けて来季への覚悟を語った。

 南は絶望の淵(ふち)からはい上がり、どんな復活へのストーリーを描いていくのか。再びZOZOマリンのマウンドに上がる姿を誰もが待ち望んでいる。(記者コラム・長井 毅)

 ◆黄色靱帯骨化症(おうしょくじんたいこっかしょう)脊髄の後ろにある「椎弓(ついきゅう)」と呼ばれる部分を上下につなぐ黄色靱帯が骨化して、脊柱管が狭くなり、神経の圧迫症状が出現する国指定の難病。背骨のうち「胸椎(きょうつい)」の部分で起こることが多い。下半身のしびれやまひなどの症状が出て、歩行困難になることもある。薬による治療のほか、骨化した部分を切除する手術も行われる。野球の投球で左右不均衡に体を曲げることの多い投手に多いとされる。





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