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父は元甲子園スター!筑陽学園・福岡が親子で描く夢(日刊スポーツ)

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出典元: 九州大会準々決勝・興南戦、延長13回タイブレークでは、自らのバットで終止符を打ち仲間と喜び合った(写真左)

端正なマスクが思わずほころんだ。

第49回明治神宮野球大会・準々決勝で、筑陽学園(福岡)が桐蔭学園(神奈川)に10-1(7回コールド)で勝ち好発進した。6番ライトの福岡大真(たいしん・2年)が4打数3安打の大活躍。「低めのスライダーを狙ったらたまたま入りました」と自身5本目のアーチも打ち、堂々の“全国デビュー”を飾った。

DNAの力もあるだろう。大真選手の父真一郎さん(42)は、94年夏の甲子園で準優勝した樟南(鹿児島)のエース。バッテリーを組む田村恵捕手(42・広島スカウト)と2年生バッテリーで話題になり、甘いマスクで女性から絶大な人気を集めた。高校卒業後、九産大-プリンスホテルで野球を続けたがケガに泣かされ「自分のような選手を減らしたい、救いたい」との思いでトレーナーへの道を選択。加圧トレーニングの資格を取得し、7年ほど前から筑陽学園ほか福岡県内チームのサポートをしている。

父は自分のことをめったに話さない。しかし大真選手は、関係者や報道陣から父の活躍や、当時の人気を聞くたびに尊敬の念が増していた。小4で野球を始め、甲子園に行くことの難しさを知っている。それだけに「4回も甲子園に行ってるオヤジ、すげえ、です!」。同じ野球人として心から憧れている。

■本来は3番を打つ選手。DNA? 本人もソノ気になっています

秋の九州大会では「持ってる」活躍を見せ続けてきた大真選手。

延長13回タイブレークとなった準々決勝・興南戦では、自分の打った一塁へのゴロが一塁手から本塁への暴投となり、サヨナラ勝ち。準決勝・大分戦では延長12回に右越えソロを放ってダメ押し。決勝・明豊戦は8回2死三塁から左前へ同点打を放って、初の九州王者へと導いた。

江口祐司監督(56)は大真選手の強運について「記者のみなさんがDNA、DNAって言って下さるので、本人がソノ気になっています」と上機嫌。「本来は3番を打てる選手ですが、福岡が6番にいることで打線に厚みが出て、いい結果につながっている」と高い評価を口にしている。いまやチームに欠かせない強打者だ。

父の福岡さんは、小柄ながらキレのあるスライダーとマウンド度胸で相手を凌駕する名投手だった。そして、野球雑誌の人気投票では不動の1位を獲り続ける「甲子園スター」でもあった。記者がその福岡さんと再会したのが2017年秋の北九州市民球場。1年生ながら、息子の大真が背番号19でメンバー入りしたと教えてくれた。「親子鷹」として記事にしようとしたが「ダメ。まだ何もやってないのに載せるのはおかしいでしょ」と言われ、そのまま保留に。メディアに持ち上げられることの怖さを知っている福岡さんは、慎重な姿勢を崩さなかった。

 あれから1年。背番号9でメンバー入りした息子の活躍を、スタンドから嬉しそうに眺める福岡さんの姿があった。「自分が試合で投げるよりも、息子の試合を見てるほうがドキドキするね~」と大きな目を輝かせていた。活躍を伝える記事は快諾。日替わりヒーローで勝ち進むチームを、頼もしそうに見つめていた。

寮生ではない大真選手は朝6時に家を出て、毎日の朝練に参加。食事と筋力トレーニングで体重を10キロ増やした努力家だ。江口監督から「周囲への感謝」を学び、一塁手の弥富紘介選手(2年)とともにトイレ掃除を率先して行っている。そういった謙虚な姿勢も、秋の活躍につながっているのだろう。

「持ってる? いえいえ、みんなのお陰です」と謙遜しながらも「肩甲骨の柔らかさは父譲りだって言われてます」と、父との共通点を嬉しそうに話す大真選手。「こんなに大勢の観客がいる前でプレーしたのは初めてだったので、楽しめました。緊張? それはなかったです」と白い歯を見せた。この強心臓も父譲りに違いない。

甲子園ファンを魅了した福岡真一郎さんと、父が果たせなかった「日本一」に挑む息子・大真選手。心を熱くさせる親子の物語がこの秋、静かに始まった。【樫本ゆき】





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