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【平成の真実(22)】平成25年12月22日「オルフェーヴルのラストラン」(サンケイスポーツ)




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出典元: 圧倒的なラストランの後の引退式で、フラッシュの光を浴びるオルフェーヴル

中央競馬の平成最後の三冠馬(2011年)、オルフェーヴルは記録にも記憶にも残る名馬だった。破天荒なやんちゃキャラとレースでの圧倒的な強さ。平成25年12月22日、ラストランとなる有馬記念は8馬身差の圧勝で花道を飾った。引退が惜しまれるようなパフォーマンスだったが、実はオルフェの状態はとっくにピークを過ぎていた-。(取材構成・内海裕介、柴田章利)

 カクテル光線に浮かび上がる雄姿に、寒いなか、中山競馬場に残った6万人を超すファンから惜しみない拍手が送られる。平成25年12月22日。12万人を集めた有馬記念の興奮もさめやらぬ夕闇の引退式に、王者オルフェーヴルの姿はあった。

 史上7頭目の3冠制覇、そして2度の凱旋門賞2着。一時代を築いた名馬のラストランは、2着ウインバリアシオンに自身のキャリア最大の8馬身差をつける、究極の圧勝劇で幕を閉じた。

 絵に描いたような大団円。しかし当時のオルフェは、すでにピークを過ぎていたと調教師の池江泰寿(49)は述懐する。

 「オルフェーヴルが一番いい状態でレースに臨んだのは4歳の凱旋門賞(2着)のとき。あの後はさすがに反動が出て、ジャパンC(2着)も見送った方がいいと僕は言っていました」

 3歳時、完勝に次ぐ完勝で3冠制覇を成し遂げたが、その1冠目となる皐月賞の前に、オルフェは異例の多さである6戦を消化していた。加えて、古馬になってからの王道路線では、タフなしのぎ合い。勤続疲労がじわりじわりと、最強馬を追い詰めていた。「最後の有馬のときは、追い切りの動きにもオルフェらしさがなかった。悪い状態とかではないけれど、いいところ7、8分のコンディションだった」と池江は振り返る。

 だが本番でトレーナーの不安は杞憂(きゆう)に終わる。単勝160円の圧倒的支持を受けたオルフェは、いつものように後方から運び、そして伝説ともなった“3コーナーまくり”で後続を一気に突き放した。力の違いをこれでもかと見せつけた、グランプリ史に残る名場面。しかもそれは、手綱を取った騎手・池添謙一(39)の意図したところではなかった。前年の阪神大賞典(2着)で走路をコースアウトする“世紀の大逸走”も演じた人馬。鞍上の意識は、まるで別の部分にあった。

 「自分としてはあの日は、花道を飾ってあげたいという気持ちだけでした。オルフェの課題は集中力。集中力のスイッチが普通の馬と違うので、最後までそこは途切れさせないようにしたかった。だから僕が追ったのは、直線を向いてからだけ。他の馬が止まったせいもあるけど、あのまくりはオルフェが自分から動いて、他を引き離していったんです」

 強さの中にもろさも秘めていた平成の個性派王者が、本当の力を身をもって誇示したオルフェ劇場最終回-。気高き平成最後の三冠馬は、類いまれな資質を後世に残すべく、北の大地で種牡馬生活を送っている。=敬称略

★暴れん坊伝説

◆騎手を振り落とす

 新馬戦(2010年8月14日、新潟芝1600メートル)は、最後の直線で大きく左にヨレて1着でゴール。ゴール後は向こう正面で内ラチに突っ込み、池添騎手を振り落とした。菊花賞(11年10月23日)でも、ゴール後の1コーナーあたりで騎手を振り落とした。

◆大逸走

 前年の年度代表馬として迎えた12年の初戦、阪神大賞典(3月18日、阪神芝3000メートル)では、2周目の3コーナーを曲がり切れずに外ラチ付近まで逸走。先頭から後方2番手まで順位を落としたが、そこから追い上げて半馬身差の2着でゴールした。

◆フランスでも

 最初の凱旋門賞(12年10月7日、ロンシャン、芝2400メートル)は、後方2番手から直線で一気に追い上げた。残り300メートル過ぎで先頭へ。悲願達成かと思われたが、そこから内に急激に切れ込んだ。勢いが鈍ったところを地元のソレミアが強襲。内ラチにぶつかるシーンもあり、最後はかわされてしまった。

★パパとしても個性が強すぎる!?

 来年、種牡馬生活6年目を迎えるオルフェーヴルは現在、繋養先の社台スタリオンステーション(北海道安平町)で2月から始まる種付けシーズンへ英気を養っている。

 「この時季は室内練習場で、現役時代と同様にアクティブに動き回っています。体も太らないですしね」と同事務局の徳武英介さん。初年度産駒からエポカドーロ(皐月賞)、ラッキーライラック(阪神JF)と2頭のGIホースを送り出したが、産駒の成績にバラつきも見られ、種付け料は来年度より500万円から400万円に引き下げられる。

 「実力はGI馬を出して証明されているので、あとはホームラン級の馬を出すアベレージを上げられるか。そういう意味で種付け価格を引き下げました。種牡馬としては個性が強すぎる感じもあるので、今後は配合や育成も工夫します。期待してもらっていいですよ」と、同氏はステイゴールドの後継種牡馬としてのさらなるブレークを期待している。

■オルフェーヴル

 父ステイゴールド、母オリエンタルアート、母の父メジロマックイーン。栗毛の牡10歳。現役時は栗東・池江泰寿厩舎所属。北海道白老町・(有)社台コーポレーション・白老ファームの生産馬。戦績21戦12勝(うち海外4戦2勝)。GIは皐月賞、ダービー、菊花賞、有馬記念(2勝)、宝塚記念の6勝。14年に社台スタリオンステーションで種牡馬入り。馬名は「金細工師(仏)」。


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